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4月29日(2) ニース〜バスティア Nice-Bastia [Corsica]



無事フェリー乗り場までたどりつく。間に合ってほっとひと息。大きなフェリーだ。おなかが空いていたので、船内に入ってまずスパゲテリアを見つけ、そこで食事にする。見るからにまずそうなカルボナーラと、おばさんに勧められるがままにビールを頼む。見た目通り、本当にまずいカルボナーラを、ビールで流し込む。他の人の様子を見ていると、さすがのフランス人にも残している人がいる。
 


 

デッキに出て、大陸になごりを惜しむ。本当に日差しが強い。その一方で、風は少しひんやりするほど涼しい。他の人もそうしているように、壁にもたれて座ったり横になると、ウトウトとうたた寝をしてしまう。気がつくと肌がヒリヒリしている。しかし、なんとも退屈だ。地中海はどうしてそうなのかが不思議なくらいに、まるで波がない。真っ平らな水面が延々と続いている。船内に戻ると、やはりそこにも退屈そうな人の群れがある。外観は豪華だったが、中身は何ということもない。例のスパゲテリア、カフェテリア、ジェラテリア、ちょっと高いレストラン。そんなもんしかない。頭上のスピーカーから流れる80sが無意味に騒々しい雰囲気を醸し出している。いよいよマイケル・ジャクソンのベスト盤までかかり始めた。地中海の船旅、こういうものか。
 

 

どこの国でも旅行する子ども連れの家族というのは決して上品なものではないが、この船内であまり子どもがうるさく騒がないのは何故であろうか、気になった。日本人の子どもは育て方が悪いのか、それとも遺伝子がそうさせているのか。そんなオリコウな子どもの顔を見て、横にいる中年の親たちの力の抜けた容姿とを見比べてみると、成長していくことがむしろ可哀想に思えてしまう。

船旅は5時間ほどに及ぶ。バスティアに着くのは結構遅い。店が閉まっていて食いそびれてはいけないと、船内で2回目の食事をとる。今度はカフェテリアにチャレンジ。野菜を採っておきたかったので、付け合わせの野菜のありそうなものを頼む。白身魚のムニエルか何かと思って頼んだものは、鶏のナゲットの原料を薄く伸ばして焼いたような代物だった。それと、とっさに間違って"oui"と言ってしまいテンコ盛りにされた"フレンチ"フライ。そしてお目当ての温野菜。見た目は悪くない。しかし、鶏のカマボコ焼きは、どうやったらこうなるのかわからないほど、粉と油にまみれ、不味かった。野菜も明らかに、味付けもせずに冷凍野菜を不器用に戻しただけ。「ポール・セローの大地中海旅行」に出て来た、トルコのクルーズシップのエピソードを思い出す。しかし、完食しておいた。
 



チキンと格闘している間に、気がつけばコルシカ島の最北部、コルシカ岬が窓越しに見えている。その東側を南へ進む。まさに山だ。薄く、かつ高く、屏風のように連なる山がいつまでも続いている。どこに人の住む余地があるのかと思わせる、急峻な地形だ。しかし、傾き始めた太陽が山陰に隠れると、山肌に沿って薄くかかる霧の合間から、驚くべき数の家が見えて来た。遠くからは山の斜面しかわからなかったところに、家がへばりついている。これらすべてがもともとのコルシカ人の集落ではない。観光というものが中産階級のものとなったここ数十年の間に、それまで数千年以上生産力・経済的価値の乏しく、人口が希薄だったコルシカの風景を大きく変えた、フランス人、もしくは他の大陸人たちの別荘がその正体である。
 

 

いよいよバスティアに到着。目の前に現れた旧市街地は、船上の目線で見るとまるでスラムのよう。塗装のはげた建物が幾重にも連なっている。その背後にはやはり急峻な山並みが迫っている。出迎えの人を見つけて喜びの表情を見せる他の乗客の傍らで、異境にただ一人の僕には不安がよぎる。
 



 

街を歩いてみると、意外と清潔感が漂う。フランスらしさなのか。それとも観光地らしさなのか。しかし、恐れていた事態が発生した。どこも宿がいっぱいなのだ。フェリーの入った新市街から旧市街に向けて一軒一軒、高いところから安いところまでしらみつぶしに回っていくが空いていない。暗闇がどうにも迫って来る。今日は野宿をして、事によっては陰険なフランス警察にでも捕まることもあろうかという、悪い想像が頭をよぎる。そのとき、勇気を出して飛び込んだ、入り口がスラムのようなビルにある'Forum'という宿に、ようやく空きを発見。中に入るとレセプションは別世界のようで、品よくリノベートされていた。これなら大丈夫だろう。20歳前後の若い女の子2人が店番をしていて、一人は英語が話せた。部屋の準備をするのに20分くらい待てというので、暫しレセプションで待つ。2人で大騒ぎながら掃除をしているのが聞こえて来る。もう8時なのにいまごろメイクとは、どういうホテルなのだろう。部屋に入ると、レセプションとは違いえらくみすぼらしく、ベッドもヘタリが激しかったが、40ユーロだし、野宿を免れただけでも文句は言えまい。近くの部屋に英語圏からの青年が泊まっていて、少しだけ会話をする。しかし、船旅の疲れかホテル探しの緊張か、ひたすら眠かったので、すぐに就寝した。


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