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5月1日 アジャクシオ Ajaccio [Corsica]

ここまで駆け足で来たし、日曜は何かと動くことが難しいこともあり、今日はまる1日アジャクシオに滞在することにしていた。良いホテルで寛げたので、10時くらいまでゆっくり部屋で過ごす。その後、街をぶらつきはじめる。まず、街の中心のツーリストインフォメーションに向かい、地図と、明日乗る予定のバスの時刻表をもらう。さすがここは観光都市だ。英語での意思疎通の容易さに、すっきりしたような拍子抜けしたような。目の前の広場では、日曜の朝市がこの時間でもまだ賑わいをみせていた。何かの獣の肉、田舎風のソーセージやチーズといった、コルシカの野趣あふれる食材も揃っていた。他にお土産ものもいろいろと売っていたが、まだまだこの先旅は長い。軽く冷やかす程度にとどめておく。
 



 

そこから歩いて、ナポレオンの生家がある、より古いエリアに入っていく。旧市街でも通りの1階には観光客向けのレストランなどが入っているが、爽やかさが一気に薄れ、下町っぽい雰囲気が漂う。通りの幅が狭いせいか建物の背が高い上に粗末なせいか。海沿いからほんの一歩踏み込んだだけなのに、光り輝く太陽の力をここではあまり感じない。ナポレオンの生家は路地を入ったところにあったが、それがまるでぱっとしない道で一度通り過ぎてしまう。ようやく発見したが、かなりしょぼい建物だった。周囲も陰気な雰囲気が漂う。野心にあふれるナポレオン青年がこの街を飛び出した気持ちが伝わって来るし、終世戻って来なかったことも理解出来る。
 


NAPOLEON EST NE DANS CETTE MAISON LE XV AOVT M DCC LXIX 
「1769年8月15日ナポレオンはこの家で生まれた」とある。


 
 
この旧市街以外は、フランスに編入されて以後に建設されたと思しき、比較的整然とした街並みである。バスティアをジェノバに例えるならば、アジャクシオはニースの弟分といった風情がある。今日は昨日のデモの余韻はまるでなく、観光客受けのする街に戻っていた。ただ、何か退屈げな空気も漂っていた。
 


旧市街を背後に従えるカテドラル。聖と俗は古くから隣り合わせであったか。


別の場所の路上フリーマーケット
 

この街にはビーチもある。しかし、街からすぐのところのそれは大変狭く、美しいとも言えない。そして旧市街に隣接してCitadelleがあったが、バスティアのそれとは違って城塞が残るのみで、いまは軍の駐屯地として使われていた。その直下にもビーチがある。いかにも酔狂そうなゲイのマッチョやヌーディストの女、バカップルがいたりする。これに混じって、平然とピクニックをしているファミリーがいたりもするのだが。それがフランスというものか、誰もお互いを気にしている様子はない。特筆すべきことは、そのビーチと水着姿を片目に、もう一方で遠くに、白い雪のかぶった山々を同時に拝むことが出来ることである。そう、この街に来る途中に車窓から見て来た山々である。地中海に浮かぶ山、コルシカの本領発揮といったところである。
  


右に見えるのがCitadelle



Citadelle下のビーチ



山並みを背景に市街とビーチを望む 
 

市民の日曜の楽しみはもっぱらビーチより、大きな鉛か何かの球を使って楽しむゲームのようである。見ていて結局ルールがわからなかったが、球を別の球にぶつけて、どうにかする。他の場所では見たこともなく、名前もわからない。ただあまり面白そうなものではなかったので、名前を聞くにはいたらなかった。私の中学校で流行っていた「テニポン」の如き、内輪の熱狂を感じた。
 



 

夜は、楽しみにしていたコルシカの地元料理にチャレンジする。昼間散策していた時に通りかかって、目をつけていた店を訪れる。まだ時間が早かったのか、店は空いている。人の良さそうな店主が出て来て、どこに座ってもいいよと言うのでテラスの席に座らせてもらう。メニューは、ありがたいことに地元の食材を売りにしたプリフィックスになっていた。これに、店主が薦めてくれた地元の赤ワインをオーダーする。実際、ローカルであることをポリシーとしている、志の高い店のようである。僕が入って間もなくして、続々と地元の常連らしき人が入って来た。

前菜は、豆の入ったスープとクレープを巻いたようなもの。スープの方は、金時豆みたいな豆を主役に、なす、にんじん、セロリ、ウド?、オクラ?、じゃがいも、パスタと入っていた。例えるなら、ニューオーリンズのガンボのようなスープ、それでいて香辛料は控えめといった感じか。店主がカタコト英語でパンケーキと言っていたクレープ巻きの方は、リコッタのような感じの、恐らくヤギのチーズにほうれん草を練り込んだ、コルシカ特産のチーズがクレープに巻かれている。これに生のトマトのソースがかけられている。添え物はミントとレタスの一種か、ハーブっぽい葉っぱ。これが2品ともめちゃくちゃ美味い。何と形容したらいいのか、素材あっての味、大地の味。それを、その地の素材を知り尽くした料理人が仕上げている。土地の暮らしと文化が織り込まれているのを感じずにはいられない。パンは、田舎パンらしく外はすごい固さだったが、中はやわらかで香ばしい。
 


 

肉料理は、ラムのロースト。これにベイクドポテトと、レタスが添えられている。こちらは料理法がシンプルなので、珍しいというものではないが、ラムが新鮮きわまりない。もともと羊肉に強い僕ではあるが、いわゆる臭みがほとんどない。さっきまでコルシカの山野にいたやつに違いないなあと、思わず嬉しい想像がよぎる。美味くないはずがない。続いてチーズ。これが大変美味しい。しかし何故このタイミングに、大きなカットのチーズが3切れも。栗と胡桃、いちじくの甘露煮のようなものがその付け合わせに添えられている。栗は急峻な山に育つ地元の栗(カスターニャ)で、日本の感覚から言えば普通の栗(マロン)にように上等なものではなかったが、それゆえ何だか愛おしさを感じさせる味だった。甘いものが出て来たので終わりかと思ったら、なんとまだデザート。アイスに、栗チョコレート煮ソースかけ。さすがにいっぱいいっぱい。チーズは3切れのうち、2切れをそっとポケットに入れてしまった。こんなに満腹の時に食べるにはもったいなさすぎる。

まったくのエトランゼが喜びながら食べているのに気づいたのか、隣の夫婦が美味しいか聞いて来た。旅人が自分の土地のものを美味しそうに食べてくれるのは、どこの人も嬉しいらしい。しかもこの店の味は、彼ら彼女らにとっても誇りに違いない。僕が美味しそうに食べているのには、店主もリップサービスではなく本当に喜んでくれたようだ。最後お別れに、店主やウエートレスの人と固い握手をする。ここでは料理だけではなく、普段表には出てこないコルシカのハートまでもが楽しめた気がした。お腹だけでなく、すべてがいっぱいになった。これからアジャクシオを訪れる人に、是非ともお勧めしたい店である。
 


 

Restaurant Le 20123 (コルシカ料理)
2, rue Roi de Rome, 20000 Ajaccio tel. 04 95 21 50 05
(Place de Gaulleの近く、Cathedraleの裏手にあたる)
 


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