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5月3日(2) ルバーニュ〜サッサリ〜オリスターノ Lu Bagnu-Sassari-Oristano [Sardegna]

結局1時間半ほど待って、ようやくバスが現れた。バスは地元の人で相当混み合っていた。その理由も、車窓を見れば理解できた。ここよりサッサリ側は、サンタテレザ側と違って明らかに開けていた。まだ芽吹いたばかりのブドウ畑、道の両側に広がるオリーブ畑。これまでコルシカでも、サルデーニャに入ってからでも見なかった、豊かな農村風景だ。途中SorsoとSennoriという農産物の集散地らしき町を通ったが、地方の町にしては明らかに大きく、そして古い。土地の肥沃さの違いが生産力、つまり涵養する人口の違いにつながり、歴史をも変えるということを目の当たりにさせられる。もっとも、それら古い町は、路地に腰の曲がった老婆の姿が見られるあたり、日本の地方小都市同様にさびれた空気を漂わせつつあり、現代において住むにはあまり快適そうではなかったが。
 


 

サッサリのバスターミナルにつき、まずは駅前に出る。コルシカ鉄道とは比べ物にならないほどちゃんとした駅だった。駅前には路面電車の駅と軌道の跡が残され、この町が以前よりそれ程の経済力を持つ町であったことを伺わせる。駅前にほど近い旧市街を少し歩いてみる。しかし、すぐにイヤになった。怖い。まだ昼間だというのに怖い。かつてのステレオタイプである貧しい南イタリアを絵に描いたような、貧相なイタリア人に、大陸を離れてから見たこともなかった、黒人。スラムの住人だ。極端な少子化の進むイタリアにあって、すれ違う若い女は何人も子供を連れている。一歩路地に入ると、見るからに手入れが悪く、汚い建物が、中世以来の迷路のような町並みに広がっている。バスで通ってきた郊外の新市街から見ると、ここは普通の市民が普段目に触れたくないものを閉じ込めておくための空間であるかのように思える。観光地化が十分にされていない旧市街とは、こういうものなのか。今にも現代の邪悪なマルコが飛び出してきそうな一角から、恐る恐る撤退した。

サッサリは大きな都市であるにもかかわらず、まともなホテルがないことも問題であった。ガイドブックでは、鉄道かバスで1時間もかからない距離にある、海沿いの観光都市アルゲーロでの宿泊を薦めている。しかし、アルゲーロはカタロニア・アラゴン家による支配を受けた歴史を色濃く残す町、つまり小バルセロナなのである。僕はバルセロナに行ったことはない。これでアルゲーロに行ってしまっては、東京に来たことのない外国人が、小江戸・川越に泊まって何かを知ったつもりになるようなものである。それは避けたい。であるならば、一気にサルデーニャ中部のオリスターノを目指すことにした。結局北部は殆ど回らなかったことになるが、何かのときに帰路の空港(カリアリ)まですぐに出れる位置にたどり着いておくというのは、日程に制約のある社会人の旅にとって安心材料でもある。中部・南部の遺跡を楽しむことに、サルデーニャの旅の目的を定める。
 



サルデーニャ鉄道という狭軌鉄道が乗り入れている。 駅の部分は3本レールがある。
 

オリスターノへ向かう列車は夜の7時前までなかった。長距離バスはもっと遅い時間しかなかった。到着が遅くなることは不安ではあったが、ほかに選択肢はない。サッサリの駅のバールで時間をつぶしたあと、イタリア国鉄の列車でオリスターノへと向かった。夕暮れの風の吹き抜ける草原を、コルシカ鉄道とは比べ物にならない早さ、いや日本の在来線よりも断然速いくらいのスピードで、駆け抜けて行く。途中、北東部Olbia方面への分岐点であるChilivaniをすぎたあたりで、いよいよあたりが闇に包まれる。Macomerのあたりは分水嶺であったが、最近出来た短絡線のトンネルらしきものを通り、駆け抜ける。
 




途中駅で交換のための作業をする車掌さん。
 

 

オリスターノには予定通り9時20分に到着した。もう真っ暗だ。期待していたタクシーはもう店じまいしている。意を決して、目星をつけていたホテルに向かって歩く。この町がほとんど危険でないことはすぐにわかった。駅から市街中心へ向かう通りは暗いながらも、普通のイタリア人、とくに女性が、普通に歩いている。あとはホテルの部屋が空いていてくれれば問題ない。ホテルは想像以上に豪華な外観で、すっかりバックパッカー風情の僕は宿泊拒否をされるのではと不安に思うほどであったが、無事泊まることが出来た。ホテルの人の様子からも安心できることがわかったので、チェックイン後、繁華街まで歩いて行き、町の人たちがテレビでサッカーを見ながら盛り上がっているバールの片隅で、星空の下簡単ながら夕食を取ることも出来た。
 


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