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5月4日 オリスターノ〜ターロス〜カリアリ Oristano-Tharros-Cagliari [Sardegna]

オリスターノに泊まった一番の理由は、近郊のターロス(Tharros)という遺跡に行くためである。ガイドブックによると、夏期はオリスターノから公共のバスが出ているらしいのだが、シーズン前のいまの時期はそれがない。道中はずっと平野が広がっているようなので、レンタルサイクルを借りて訪れることにした。まずはツーリストインフォメーションに寄る。僕がつたないイタリア語で入って行くと、すぐに英語担当の人を取り次いでくれた。その彼女は親切、熱心で、こういう人に出会うと町の印象が一気に良くなる。話もはずんだところでアンケートに答えてほしいと言われて受けたら、かなり微妙な(調査としては優れていない)設問がA4表裏に渡って並んでいたのには困ってしまったが。長いアンケートを終えたら、お礼なのか、オリスターノ関連のあらゆる冊子をくれた。それはそれで、これから自転車に乗って遺跡まで行く僕にはかなりの荷物になるのだが、好印象であったので、これまで秘蔵しておいた「mille grazie」と言ってみた。相手も嬉しかったようだ。

ここで教えてもらった自転車屋は住宅地の中にあり、まるで観光客相手の店風ではなかったが、難なく自転車を借りることが出来た。いざ、目的地ターロスへ。通りに出て待ち受けていたのは、イタリア人ドライバーとの戦い。市街地を抜けるまでの国道は決して自転車が走りやすいものとは言えなかった。しかしオリスターノの郊外で分岐して県道レベルの道に入ってからは、それほど車の通りも多くはなく、時々かっ飛ばして行く車がラリって突っ込んででも来ない限り大丈夫だ。

ひたすら続く平坦な道。周囲には豊かな農村地帯が広がっている。ブドウ畑に加え、この旅で初めて見た小麦畑が延々と広がっている。野菜畑、花畑もある。しかし、長い。とにかく遠い。どこまで行っても着かない。自転車があまり走らないものだったからにしても、ターロスまでの20キロは思ったよりも遠かった。三十路を過ぎて、今日もいったい何の訓練をしているのか。サドルがあたる部分が痛くて痛くて仕方がない。よろず屋みたいな店で買ったサンペレグリーノの栄養ドリンクを飲み、がんばって走る。
 



 
缶の上部を覆う銀紙のカバーが瓶の装飾のようでオサレ。
 
 



このようなロケーションにターロスはある。 
 

何とかターロスに到着。その遺跡は、近づくにつれ薄々感じてはいたのだが、掛け値なしに素晴らしい場所であった。平坦な土地から小さな半島状の岬の突端に向かってこんもりと盛り上がっている、三方を海に囲まれた小山の鞍部から海岸にかけて、フェニキア・ローマに歴史を遡る町ターロスはあった。遺跡自体はその時も鋭意修復作業中で、石積みが崩れたもの、それも土台部分だけが残されているに過ぎない。観光ガイドによく使われ、遺跡のシンボルになっている2本の円柱も、この日は空が曇っていたか、背景の海に映えることもなく、それ程すごいものには見えなかった。しかしこの土地自体に何か力があることが感じられるのだ。立地として戦略上の重要性だけではないはずだ。海から海へと吹き抜ける風を感じていると、古代人にとっても我々現代人にとっても、心地よく感じるところ、土地からのエネルギーを感じるところは同じであり、つまるところ古代人はそういう場所をしっかりと選んで神聖な神殿を持つ都市を建設していたのだろうと実感する。
 
 



ターロスの顔とも言える円柱。
 

海へと続く石畳の道。
 

神殿跡。 


そしてお風呂跡(笑)。
 

この時代から物流は重要であった。溝の遺構が素晴らしい。
 

英語の出来ないドイツ人のじいさんにカメラを奪われ、撮られる。
 


見張り台は後世にカタロニア人が作ったもの。
 



周囲は美しい海岸線が続く。
 

 

遺跡の見学を終え、入口手前のレストランでお昼を食べる。ここだけでなく、至る所で冷凍食品のパスタや工場で作られたパニーニが席巻しているのを目にした。11年前に初めてヨーロッパを訪れた際、フランスでは安い食べ物がすべて不味かったのに対し、イタリアでは安くてもすべて美味しかったのが印象に残っていたのだが、それも昔の話になってしまったのかと思う。それはさておき、もし豊かな老後が訪れるならば、遺跡巡りを趣味にしようと決めた後、ターロスを後にする。帰りは若干短く感じたが、やはり遠かった。途中小さな川べりに白っぽいかたまりがあるのを見た。よく見たらヒツジの群れであった。僕は動物占いがヒツジであることもあり、共食いも含め、最近ヒツジに親近感を感じている。何より群れをなしているその姿はかわいい。和む。しかし、そちらの方から吹いてきた風は屎尿の薫りがした。
 


オリスターノへの途中、Cabras湖という水辺のほとり。
 

自転車屋に戻ると、4時までのシエスタが時間が過ぎても終わっていなかった。今日カリアリへ移動しようと思っていたので、自転車屋をたたき起こす。無事返却した後、ホテルに預けてあった荷物をピックアップし、歩いて駅へと向かい、カリアリ行きの列車に乗る。向かい合わせの座席にはここまでで一番可愛いイタリア人の女の子が座ったが、自転車往復40キロの我が身には、まるでお近づきになろうとする余力が残されておらず、2回もよだれをたらしかけながら、爆睡。女の子が降りて行った後、時々眠い目をこすりながら見た、オリスターノからカリアリの間のカンピダーノの平原は、これまで山やら丘やらばかり見て来た者には拍子抜けするほど単調な平原であった。

ぼーっとしたままカリアリの駅前に立つ。まるでメインランドと変わらない、イタリアのかなり大きな都市に辿り着いたことを思い知らされる。活気、人、車、石畳。うるさいうるさいうるさい!ホテルは駅周辺にも集中しているのだが、ちょっとゆっくりしたいと思ったので、ガイドブックに載っていた、郊外の海辺のホテルへとタクシーを飛ばす。思えば、この旅で初めてのタクシーだ。ここまでどれだけ歩いたことであろう。バス待ちもした。今日は自転車のおまけまでついた。この1週間あまりで、一般の旅行者はこれほどに安楽な乗り物で旅をしていることを忘れるほどだった。タクシーの運転手はいかにも感じの良いイタリア人で、何かれ話しかけてくる。イタリア語を上達させたいと思っている人にはぴったりに違いない。どこから来たのか、どこへ行ったか、休暇で来ているのか、イタリアはどうか、、、(最後の質問には、「美しい」という答えしか用意されていない!)などなど。もちろん運転中でも、後部座席に身を乗り出してきて、しゃべる、前も見ずに、しゃべる。Buono!

そうこうしているうちにホテルに着く。運転手に「開いてるの?」と聞いてしまうほど、想像以下にくたびれたホテルであった。千葉か伊豆かどこかの海岸の、1960年代頃に建てられた「観光ホテル」の趣である。わざわざ休みにあわせて彼女とやってきたホテルがこれだったら、泊まる前に7割の確率で別かれてしまうところであろう。3割の方に入る彼女を持つあなたは本当に幸せだと思う。いや、もし僕が女だったら7割の方に入ると思うくらいだから。今回は一人旅だし、逆にひとりでボラボラ島のようなリゾートに泊まる方が余程はた目に気持ち悪いから、良しとしよう。

残念ながら海の見える部屋は空いていなかった。部屋を出て海岸に降りて行くと、日没も近い海は何とも誰そ彼ていた。ジェノバ、ニース、バスティア、アジャクシオ、サンタテレザ、ターロス、そしてここカリアリ。地中海はどこも水面がおだやかで、足元に寄せる波も抑制がきいていて、決して驚かせるようなことがなかった。海であるのか、それとも大きな湖なのか。不思議な海、地中海。

=余談=
オリスターノとターロスを結ぶ道沿いに、Agriturismo Ferrariというのがあった。日本語にすれば、体験型農村滞在施設フェラーリといったところか。似合わない名前だ(笑)。
 

 


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