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5月7日 プーラ〜カリアリ Pula-Cagliari [Sardegna]


旅もいよいよ終わりに近づいて来た。午前中、ホテルから1キロほどの距離にある、古代遺跡のNoraまで歩いていく。サルデーニャではTharrosと並び称される、フェニキア・ローマ時代の代表的遺跡である。島の主都カリアリからの近さを反映してであろうか、アプローチは公園のように綺麗に整備され、発掘が進んでいるのであろうか、石積みの広がる規模はNoraの方がTharrosよりも大きいように思えた。この時代の遺跡のシンボルと言える、神殿の「柱」も、Noraの方が多く復元されている。ただ、海沿いでほんの小さな半島とはいえ、Tharrosと比べると普通の平坦地に位置しているからか、遺跡に入ってもTharrosで感じたような土地からのエネルギーを感じない。

しかし、遺跡の突端部にある神殿跡まで歩いていって、印象が変わった。吹き抜ける風を感じていると、やはりここも古代人がビジネスや軍事戦略上の意図以上の何かを意識して、選んだに違いないということを実感する。しかも今日はものすごくいい天気だ。海が、空が、どこまでも青い。














ここのモザイクは、白・黒・オークルの3色によるシックな色合いのもの。









Noraからの帰り、道路ではなくビーチ伝いに宿へと戻る。日差しは肌をじりじり焼くほど強く、もしこれで風がなく空気が湿ってでもいたら、うだるような暑さになっていてもおかしくないほどなのに、水にそっと足を入れてみると5月初めの海は思いのほか冷たかった。水の冷たさはカリフォルニアと似ている。地中海式気候とは良く言ったものだ。

1泊ではもったいなかった宿を出て、またバスを乗り継いでカリアリに戻る。まずローカルのバスがなかなか来ない。プーラ市街からカリアリへのバスもなかなか来ない。バールなどで休んでいてもよいのだが、バスが通り過ぎるのはほんの一瞬だ。それでまた何時間も待つのは、ちょっとばかばかしい。結果、地中海の太陽を贅沢に浴びながら、バス停にべったりくっついて待つことになる。


カリアリ駅


リナシェンテ(デパート)




晴れた日のBastione San Remyの広場はまさに空に浮かんでいるかのよう。
 

カリアリに戻ると、ここも晴天の下で別の一面をみせていた。曇りの日は車の騒音ばかりが目立つただの都会だったのに、晴れの日は穏やかな表情を見せる丘の町に変わっていた。もっとも、この日は土曜日。街はうざい男子で満ちあふれていた。この若者文化に関してイタリアは、我々の国を含めて多くの国と同様に、決してアメリカ文化の本質ではない流行としての暴力性や幼児性を積極的に輸入しているように思える。特に、文化遺産に唾を吐くかのようなグラフィティ以下の落書きは、残念と言わざるを得ないが、これは同時に、日本という概念がしばし問われるのと同様、イタリアという存在も絶対的なものではなく、相対性を帯びたものであることを示唆している(絶対性を確立せんと、時として暴挙に出るのがフランスと言えようか)。今回のように、旅行者が比較的少ないところを旅するということは、旅行者向けの化粧が十分に施されていない分、生活や文化のよりありのままの姿を目にすることになる。その姿はガイドブックにあるような完了形のものではなく、現在進行形のものであることに気づき、歴史の国イタリアのそのまた隔絶された僻地と思っていた場所にあって、数千キロ離れた東京と変わらぬ現代を共有していることを思い知らされる。

この日は、翌朝にカリアリからローマ経由で帰国便に乗るとあって、市街中心のホテルに宿泊し、その近くのレストランで夕食をとった。ホテルはそこそこの値段がしたし、レストランもサルデーニャ郷土料理を売りにしたところであったが、既に旅のクライマックスはプーラの宿にあったのか、気持ちの高まりをむしろクールダウンさせてくれるようなものであった。


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